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脊髄小脳変性症に対するプロチレリン治療の長期有効性を検証した論文が国際誌にア クセプトされました

2026.02.13

この度、神経内科大草医師を筆頭著者、神経内科関医師を責任著者とする英文論文がParkinsonism & Related Disordersにアクセプトされました。

Okusa S, Tezuka T, Nakahara J, Seki M.

Long-Term Efficacy and Disease-Specific Responsiveness to Protirelin in Patients with Spinocerebellar Degeneration: A Retrospective Study.
Parkinsonism Relat Disord. 2026

内容を以下にまとめさせていただきます。
【研究の背景】
脊髄小脳変性症は、小脳性運動失調を主症状とする進行性の神経変性疾患であり、現在のところ疾患の進行を根本的に抑制する治療法は確立されていません。
日本では、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)関連薬であるプロチレリンが運動失調症状に対する治療薬として用いられてきましたが、その長期的な有効性や疾患タイプごとの反応性については、十分なエビデンスが蓄積されていない状況が続いていました。

【研究の概要】
本研究では、2011年から2025年までの期間に当院でプロチレリン治療を受けた脊髄小脳変性症患者92名を対象とし、計273治療コースを後ろ向きに解析しました。
運動失調の重症度評価には、国際的に広く用いられているSARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)スコアを採用し、SARAスコアで1点以上の改善を認めた症例を治療反応例と定義しました。

【主な結果】
解析の結果、プロチレリン治療は全体の64.1%の患者において臨床的改善を示し、SARAスコアは統計学的にも有意な改善を認めました。
特に、特発性小脳失調症(IDCA)、多系統萎縮症・小脳型(MSA-C)、および脊髄小脳失調症-31 (SCA31) の患者群において有意な改善が確認されました。
なかでもIDCAおよびSCA31では、治療効果が長期にわたり持続する傾向が認められ、一部の患者では10年以上に及ぶ治療反応性が観察されました。
一方、疾患進行が比較的速いMSA-Cでは、早期には改善がみられるものの、その持続性は限定的であることが示唆されました。
さらに、治療反応性に関連する因子として、若年であることや累積投与量が多いこと(IDCA)、および病期が比較的早期であること(SCA31)が、より大きなSARAスコア改善と関連する可能性が示されました。安全性評価では、有害事象の発現率は2.2%と低く、主に軽微な皮疹および血球減少が認められたのみであり、長期投与症例においても重大な内分泌異常は確認されませんでした。

【本研究の意義と今後の展望】
本研究成果は、TRH関連療法の長期的な有効性の可能性および疾患進行速度による治療反応性の違いを示すものであり、脊髄小脳変性症に対する治療戦略の最適化に向けた重要な知見を提供するものです。今後は、前向き臨床研究や標準化された投与プロトコルの確立に加え、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の評価、さらには神経画像やバイオマーカー解析を組み合わせた検討を進めることで、より高次のエビデンス構築を目指してまいります。

【慶應義塾大学病院パーキンソン病センターの取り組み】
慶應義塾大学病院パーキンソン病センターでは、パーキンソン病のみならず、多系統萎縮症や脊髄小脳変性症を含む運動障害性疾患全般に対する診療および臨床研究を積極的に推進しております。本成果は、患者さんの症状改善と生活の質向上を目指す研究活動の一環として得られたものです。

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