パーキンソン病とその類縁疾患における多彩な症状の包括的把握とそれに基づく臨床研究
パーキンソン病およびその類縁疾患の神経画像バイオマーカーの樹立
パーキンソン病およびその類縁疾患は、人口の高齢化に伴い患者数の大幅な増加が見込まれています。しかし、パーキンソン病の診断において単独で十分な診断精度を持った臨床症状や検査データは未だに開発されていません。そのため、診断は診察所見、検査所見、薬剤への反応性などを総合的に判断して行われていますが、早期診断が難しい場合がしばしばあります。パーキンソン病および類縁疾患の診断精度向上に有用な指標(症状や検査データ)の開発が求められています。また、病気の進行の具合(重症度)を反映する客観的指標も確立されたものがありません。
以前はパーキンソン病患者さんの頭部MRIは正常であることが特徴とされていましたが、近年、高磁場MRI機器の登場、先進的な撮像法の開発、画像解析技術の進歩によりパーキンソン病患者さんに特徴的なMRI所見を捉えることができるようになってきました。この研究ではパーキンソン病および類縁疾患の診断、重症度判定、病態の理解などに役立つ頭部MRI所見を明らかにすることを目的にしています。この研究の成果によりパーキンソン病および類縁疾患の診断精度および重症度判定の精度が向上したり、病態の理解が深まれば、より適切なケア・医療の提供が可能になるものと思われます。


パーキンソン病に影響を与える腸内細菌叢の探索
微生物学・免疫学教室との共同研究
近年、腸に常在する腸内細菌が脳に影響を与えるのではないかと言われています。腸管は、「第二の脳」と呼ばれるほど神経細胞が張り巡らされており、腸内細菌による腸の炎症がパーキンソン病及び類縁疾患の病態に関与する可能性や腸内細菌による薬物代謝が薬効に影響を及ぼす可能性が示唆されています。
しかしながら、ヒトの粘膜に存在するどの細菌がそのような機能を持つのかはあまり明らかになっていません。そこで本研究では病気の発症や症状、薬へ強く影響を与えるヒトの粘膜常在細菌を探し出すことや機序を解明することを目的とします。薬へ強く影響を与えるヒト粘膜常在菌株が得られた場合、治療法の改善につながる可能性があります。本研究では腸内細菌だけでなく代謝物についても解析を行い、粘膜常在細菌株を活用した新たな治療法の開発を目指します。

MDSパーキンソン病診断基準におけるMIBG心筋シンチグラフィの有用性の検討
多施設共同研究(研究代表施設:慶應義塾大学病院)
2015年に国際パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDS)からパーキンソン病の新しい臨床診断基準が提案されました。この診断基準を用いることで非専門家であってもパーキンソン病を正しく診断できることが期待されています。診断基準の中には臨床症状だけでなく、123I-meta-iodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィや嗅覚検査といった検査も入っているのが特徴の一つです。海外で行われた先行研究でこの診断基準の有用性が示されていますが、診断基準に含まれているにも関わらずこの先行研究ではMIBG心筋シンチグラフィはほとんど行われていません。そのため、MIBG心筋シンチグラフィがMDS診断基準の診断精度に与える影響は明らかではありません。本研究の目的はMIBG心筋シンチグラフィによりMDSが提唱するパーキンソン病の診断基準の診断精度が向上するかを検討することです。
