研究紹介

Research

パーキンソン病とその類縁疾患における多彩な症状の包括的把握とそれに基づく臨床研究

パーキンソン病およびその類縁疾患の神経画像バイオマーカーの樹立

パーキンソン病およびその類縁疾患は、人口の高齢化に伴い患者数の大幅な増加が見込まれています。しかし、パーキンソン病の診断において単独で十分な診断精度を持った臨床症状や検査データは未だに開発されていません。そのため、診断は診察所見、検査所見、薬剤への反応性などを総合的に判断して行われていますが、早期診断が難しい場合がしばしばあります。パーキンソン病および類縁疾患の診断精度向上に有用な指標(症状や検査データ)の開発が求められています。また、病気の進行の具合(重症度)を反映する客観的指標も確立されたものがありません。
以前はパーキンソン病患者さんの頭部MRIは正常であることが特徴とされていましたが、近年、高磁場MRI機器の登場、先進的な撮像法の開発、画像解析技術の進歩によりパーキンソン病患者さんに特徴的なMRI所見を捉えることができるようになってきました。この研究ではパーキンソン病および類縁疾患の診断、重症度判定、病態の理解などに役立つ頭部MRI所見を明らかにすることを目的にしています。この研究の成果によりパーキンソン病および類縁疾患の診断精度および重症度判定の精度が向上したり、病態の理解が深まれば、より適切なケア・医療の提供が可能になるものと思われます。

二重課題を用いたパーキンソン病の歩行に関する臨床研究

リハビリテーション科との共同研究

正しく歩行できることは日常生活において非常に重要なことは言うまでもありません。パーキンソン病患者さんはしばしば小刻み歩行、すり足歩行となり、時に歩行開始時や歩行の最中にすくむことがあります。様々な歩きづらさの中でもすくみ足は患者さんの生活の質を大きく低下させ、転倒による骨折にもつながる重要な症状です。しかし、すくみ足に対しては抗パーキンソン病薬の効果は乏しく、歩行の際に視覚・聴覚を用いた工夫を助言するにとどまっていることも多いのが現状です。治療法が確立していないことの理由の一つはすくみ足のメカニズムが非常に複雑ではっきりとは解明していないからです。また、すくみという症状は同じであっても、患者さん毎にそのメカニズムが異なることも治療を難しくしています。この研究ではパーキンソン病患者さんの歩行を計測し、歩行障害、特にすくみ足と関連する症状を調べます。また、パーキンソン病患者さんは2つのことを同時に行うことが苦手になる傾向があります。課題を行いながら歩いていただき、負荷がかかった時の歩行の変化を計測することで、歩行障害のメカニズムを検討することを目的にしています。

本態性振戦とパーキンソン病の非運動症状に関する臨床研究

近年、海外では本態性振戦において、難聴、嗅覚障害、精神症状、認知機能障害、睡眠障害、起立性低血圧などの運動以外の症状(非運動症状)が報告されておりますが、日本からの報告は皆無です。一方、パーキンソン病では様々な非運動症状が広く知られるようになっています。本研究では本態性振戦、パーキンソン病の非運動症状の比較を行うことで、発症早期の鑑別の一助とするとともに、病態との関連性を解き明かすことで、より両疾患の疾患概念を深めることを目的とします。

MDSパーキンソン病診断基準におけるMIBG心筋シンチグラフィの有用性の検討

多施設共同研究(研究代表施設:慶應義塾大学病院)

2015年に国際パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDS)からパーキンソン病の新しい臨床診断基準が提案されました。この診断基準を用いることで非専門家であってもパーキンソン病を正しく診断できることが期待されています。診断基準の中には臨床症状だけでなく、123I-meta-iodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィや嗅覚検査といった検査も入っているのが特徴の一つです。海外で行われた先行研究でこの診断基準の有用性が示されていますが、診断基準に含まれているにも関わらずこの先行研究ではMIBG心筋シンチグラフィはほとんど行われていません。そのため、MIBG心筋シンチグラフィがMDS診断基準の診断精度に与える影響は明らかではありません。本研究の目的はMIBG心筋シンチグラフィによりMDSが提唱するパーキンソン病の診断基準の診断精度が向上するかを検討することです。

パーキンソン病の予後予測因子に関する研究

現在進行中の治験

慢性流涎症(唾液過多)患者を対象としたNT 201の非盲検、
非対照試験(NT201S-301)

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